相続や贈与に関しましては税理士はいろいろな問題に直面します。
その中でも今回私が実際に経験したあるケースについてお話しします。
典型的な四人家族、夫・妻・お子様2名で、夫が死亡したケースで、ある問題が発生しました。
この例で本来相続できるのは妻と子供2人の合計3名なのですが、死亡した夫には先妻の子も2人いました。もちろん、その2人の先妻の子供達も相続権があります。
そのため、夫が生きているうちに遺言状を作成しなければと、夫と妻は公証人役場を日程の予約をし、遺言状作成のための準備を進めておりました。
夫が亡くなる前にはやはり先妻の子ではなく、長く時間を共に過ごした今の子供たちに、少しでも多くの財産を残してあげたいというのが妻の正直な気持ちではないでしょうか。
遺言状を作成しておけばこれで安心と考えていた矢先に事件が起こりました。
明日、公証人役場で遺言状を作成するという日になって、なんと夫が持病のために突然急死してしまったのです。
妻と今の子どもたちで十分な相続をする予定を組んでいたのですが、先妻の子供達と揉めてしまうことはこれで必然になってしまったのです。
もちろんこうなってしまえば先妻の子供達にも事情を説明しなければなりませんし、遺言状を妻と現在の子供2人でのみ作るという訳にもいかず、先妻の子供達も含めて遺産分割をするという話になります。
双方が納得いくように十分な説明をしなければなりませんし、また遺言状を作成する予定であったという件も、隠すよりも明らかにして、お互いになんの遺恨も残らないように双方の利害を調整することが大事です。
しっかりとした話し合いの上で調整をすることが求められました。
この件で一番争点になったのは、今の妻に自宅を残すという問題でしたので、様々な遺産を双方の言い分も含めて調整させていただきました。
一番の目的でもあった自宅を妻に相続するという件は、クライアントの目的を達成し、双方何の遺恨も残らず遺産分割を完了することができました。
人の死は誰もコントロールできません。
このような予定外の事象も発生するということにおいては良い経験になりましたし、またその時の対応をどうするかによって、相続後の親族の関係にも多大な影響を及ぼしかねない事案でした。
今回の私が遭遇した事例は本当に稀なことだと思いますが、どなたにも起こり得る事態でもあると思います。想定外にもかかわらず柔軟な対応ができた点では、お客様にも感謝の言葉を頂戴いたしました。